開発ストーリー
「ほぼ日のアースボール」には、
新しい技術やアイデアが
たくさん詰まっています。
アースボールの実現に欠かせない6人の、
それぞれの開発ストーリーをご紹介します。
「世界中の衛星から情報を集め、
全球の降水マップをつくる」
JAXA山地萌果さん
衛星全球降水マップ「GSMaP」
JAXAが提供する「GSMaP(ジーエスマップ)」は、
世界の「リアルタイム雨マップ」になります。
世界各国の衛星から得た情報を、
JAXAの「地球観測センター(EORC)」で組み合わせ、
全世界の雨のデータにして公開しています。
「GSMaP」そのものは、
ウェブサイト上で公開されているので、
無償でどなたでもごらんいただけます。
2007年11月に一般公開をして、
そこから日々改良を重ねている状況です。
通常、みなさんがよく目にする
実際に降った雨の情報は、
地上に設置した観測機器によって得られたものです。
「GSMaP」はそうしたデータを参考にしつつ、
衛星データをメインにしているのが特長です。
雨量計が設置できないような海上の雨量も、
「GSMaP」ではごらんいただけます。
アジア圏に強い降水マップ。
JAXAの「GSMaP」は、
世界中の幅広い分野で使っていただいています。
海外の気象庁が使っている例もありますし、
洪水解析で防災機関が使っていたり、
水資源管理、農業、教育分野などで
役立てられていたり、
いろいろなところでご利用いただいています。
「GSMaP」のユーザー属性を見てみると、
アジア圏が3分の1を占めています。
アジアという地域はモンスーンがあるので、
特徴的な雨の降り方をします。
また、台風が海からやってくるとき、
実際に海上のデータというのは
なかなか集めにくいということから、
ベトナム、フィリピン、インドネシアなどでは、
気象予報の参考データとして
「GSMaP」が活用されています。
そうしたアジアの国々と連携しながら、
「GSMaP」と実際に地上で測ったデータを比べて、
「ここはよくあってた」
「ここはあまりあっていなかった」
というように、さまざまな地域で比較をしています。
そうした情報を蓄積しながら、
精度をより高める研究や、
より使いやすいシステムづくりをつづけています。
防災意識を高めるきっかけに。
全球の雨データは昔からありましたが、
いまほど細かく見ることはできませんでした。
それこそ一昔前の世界の雨データは、
「250km格子」くらいだったと聞いています。
それが時代とともに性能が上がり、
いまの「GSMaP」では、
「10km格子」までわかるようになりました。
今後、もっと高解像度のデータが出せるように、
いま研究を進めているところです。
アースボールではARを使って、
球体の地球に「GSMaP」を見ることができます。
「GSMaP」というデータを、
これほど身近に触れられるツールは、
いままでなかったように思います。
気象に興味がある人だけじゃなく、
いろんな方々に「GSMaP」を使っていただき、
地球上のさまざまな地域の雨のようすに、
興味をもってもらえたらいいなと思います。
最近は台風の被害が甚大化していますし、
気候変動の影響などもあって、
日本でも豪雨への防災意識が上がってきています。
こういったプロダクトを通して、
少しでもそういうことに貢献できるとしたら、
私たちとしてもすごくやりがいを感じますね。